再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
酷いことをされた。酷い裏切りを受けた。
でもカネラ王子はこの『砂漠の国』の王子様で。
そんな彼をリューが……竜帝が殺めてしまったとなったら、間違いなく『竜の国』と『砂漠の国』の関係に大きく亀裂が入るだろう。
最悪、国同士の争い――戦争になってしまう。
それに何より、リューが誰かを手にかけるところなんて見たくなくて、咄嗟に身体が動いていた。
でも。
(――!)
その金の瞳が大きく揺れるのを見て、私は即座に自分の行動を悔いた。
「リュ、……っ!?」
もう一度彼の名を呼ぼうとして、同時、バサリと彼が大きく翼を動かし大量の塵が舞い上がる。
目を開けていられなくて、なんとか開けられた時にはもう、その姿はなかった。
「リュー?」
目を凝らして空を見上げてみても、あの美しい竜の姿は闇に溶け込んで見つけることは叶わなかった。
「助かったぁ。ありがとね、聖女サマ」
その安堵の声にゆっくりと振り返れば、カネラ王子が立ち上がりながら己の衣服についてしまった塵を払い落していて。