再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
「や~、まさか竜帝が出てくるなんて思わな」
パンっ
「!?」
乾いた音が響いて、ローサとメリーが息を呑むのがわかった。
「……聖女、サマ?」
私に思いっきり引っ叩かれた頬を押さえて、カネラ王子が呆然と呟く。
そんな彼を睨み上げて、私は言う。
「勘違いしないでください。私は貴方を助けたわけじゃない」
「え?」
「あなたは、人として最低なことをしたんです。そのことを忘れないでください」
その目が大きく見開かれるのを見て、私は彼から視線を外した。
「ローサ、メリー、大丈夫?」
声を掛けると、ハッとしたようにメリーがもう一度私の胸に飛び込んできた。
「コハルさまぁ~怖かったのです~。あいつマジ何なんですか~~」
「コハル様、やはりあの竜は……」
そう掠れた声で訊ねたのはローサだ。
「うん。リュー……リュークレウス竜帝陛下に間違いない」
私が答えるとローサは「やはり」と顔を引き締め、静かな夜空を見上げた。
私もその視線を追うように再び空を見上げて。
「早く、追いかけなくちゃ」
「え?」
前にも、私はあの瞳を見ている。
あの大きく揺れた、傷ついた金の瞳を私は知っている。
だから早く彼の誤解を解いて、その身体を強く抱きしめたいと思った。