再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
第71話
――覚えていろ――
この世の全ての恨みつらみがこもったような悍ましい声。
――必ず……必ずオマエを――
この世の全ての怒り憎しみがこもったような恐ろしい眼。
私はそれを、ただ呆然と見ていた。
「コハルさま?」
「!」
可愛らしい声にハっとして視線を落とすと、つぶらな瞳が私を心配そうに見上げていた。
「大丈夫ですか? コハル様」
「あ……」
続けてローサにも訊かれ大丈夫と答えようとしたけれど、喉に何かつかえたように声が出なくて。
「聖女様?」
クレマ王子も膝を着いたままこちらを不安そうに見上げていて。
私はこくりと生唾を飲み込み、なんとか笑顔を作った。
「も、勿論です。もし本当に魔王が復活するというなら、聖女として出来る限りのことは」
その声は少し震えてしまっていたかもしれないけれど。
それでも「ありがとうございます」ともう一度頭を下げられて、私はドクドクと低く響いている胸を押さえた。