再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
第73話
「エル……?」
――なんでエル……妖精王エルフェイツィー様がここにいるのだろう。
ブローチはないのに。
ここは『妖精の国』から遠く離れた『砂漠の国』なのに。
夢? それとも、幻だろうか?
「妖精王様!?」
「え、妖精王って、あの妖精王?」
でも、ローサの素っ頓狂な声に続いてカネラ王子の声が聞こえて、彼女たちにも見えているのなら夢や幻ではないと確信する。
なぜかはわからないけれど、エルが本当に来てくれたのだ……!
「全然呼んでくれないんだもんなぁ。もっと気軽に頼ってくれていいのに」
そんなようなことをぼやいているエルに、私は縋りつくようにメリーを差し出した。
「エル! お願い、メリーを助けて! 癒しの魔法をいっぱい使って、そしたら急にこんなにぐったりしちゃって、私どうすればいいか」
「大丈夫」
「え?」
エルは翡翠の瞳を細め綺麗に笑っていた。
「大丈夫だよ。ちょっと力を使い過ぎて深い眠りに入っちゃっただけ」
「深い、眠りに?」
エルが笑顔で頷く。