再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
魔族の街
第77話
「あ、ごめん、ちょっとだけ待ってて。一応クレマに声掛けてくる」
カネラ王子はそう言って先ほどの建物の方へと駆けて行った。
「……本当に信じて良いのでしょうか」
その後ろ姿を見つめながら訝しげに言ったのはローサだ。
エルとは一度手を離したみたいだ。
「大丈夫、だと思う」
そう、思いたいだけなのかもしれないけれど。
先ほどエルから魔族たちとの共謀を疑われたときの反応は嘘には見えなかった。
「あの方が魔族だというのは、コハル様は御存知だったのですか?」
「う、うん」
隠していた手前、気まずく思いながら頷く。
「私も知ったのはついこの間だけど、彼、自分が魔族だっていうことを気にしてるみたいだったから……」
「コハル様は優しすぎます」
溜息交じりに言われて慌てて弁解する。
「私も完全に信じてるわけじゃ」
「さっきの彼の言葉に偽りはないと思うよ」
エルが穏やかに言う。