再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。

第78話


 あの竜の都での一件でちゃんと姿が消えていることはわかっているけれど、それでも緊張が走る。
 上空から見る限り、その集落の規模はこれまで立ち寄ったオアシスの街とさほど変わらない。
 しかし近づくにつれ異変に気付く。

(……?)

 徐々にはっきりと見えてきた住人たちは人の姿の者と魔族の姿の者、半々だった。
 その者たちが住居となっているらしいいくつもの横穴を慌ただしく行ったり来たりしている。
 更には大声で叫ぶ声、泣いている子供の声まで聞こえてきて胸がざわついた。
 彼らを見下ろせる低めの岩山にエルとローサが着地して、メリーもその近くに降り立った。

「何かあったのでしょうか?」

 姿は消えていても声は聞こえてしまうとエルから聞いたのだろうか、ローサが声を潜め言った。
 私はメリーに言ってその場に降ろしてもらい、改めて魔族たちの様子を見下ろす。
 と、そのときカネラ王子が比較的大きめの横穴から出てくるのが見えた。魔族たちの行動に気を取られて気付かなかったけれど、いつの間にか中に潜入していたみたいだ。
 王子はこちらの姿を見つけると忙しなく行き交う人々をうまく避けながら飛び上がった。
< 374 / 435 >

この作品をシェア

pagetop