再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。

第80話


「クレマの街を襲った魔族たち、急におかしくなったんだって」
「え?」

 カネラ王子が前方を見つめたまま言った。

「それまで普通に生活してたのに、一部の魔物の血の濃い者たちがいきなり『これから人間の街を襲いに行くぞ』って」
「どういうこと?」
「わからないけど、なんとなくわかるかも」
「どっちだよ」

 私を抱えてくれているメリーの小さなツッコミが聞こえた。

「うん、僕にもわかる」

 そう続けたのはエルだった。
 彼と手を繋いでいるローサが不思議そうにその横顔を見つめる。

「これは本気でマズイかもしれないな」
「え?」
「場所なんて聞く必要なかったかも。――ほら、あそこだ」

 カネラ王子が指差した先には一際高い岩山群が聳えていた。
 その上空に向かって飛んでいくカネラ王子に私たちはついて行く。そして。

 ――え?
 
 その岩山を超えた先、丁度谷間にあたる場所には地面が無かった。
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