再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。

 あるのは、虚ろな穴。
 地獄の底、いや、『魔界』にまで続いていそうな真っ暗な闇がぽっかりと口を開けていた。

(これが、竜の洞……?)

 吸い込まれそうな闇に、思わずごくりと喉が鳴ってしまった。
 てっきり魔族たちの集落にあったような横穴だと思っていた。まさかこんな、落ちたら一巻の終わりみたいな“穴”だったなんて……。
 カネラ王子がその穴を見下ろしながら神妙な顔つきで言う。

「これが原因だよ。魔族たちがおかしくなったのって。ほら、呼ばれてる気がするって俺最初に言ったでしょ。ここからヤバイのが全部漏れ出してる」
「ヤバイのって……」
「ごめんなさい、コハルさま」
「メリー?」

 か細い声が聞こえて見上げれば、その顔が真っ青になっていて驚く。

「ちょっと、一度降りるのです……」
「だ、大丈夫!?」

 メリーはふらつきながらも近くの岩山に私を降ろしてくれて、たちまち元の可愛らしい姿に戻ってしまった。
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