再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
(そっか、あと飛べるのはカネラ王子しか……)
さすがに何の道具もなしにこの底の見えない洞穴へひとり降りていくのは無理だ。
まだ彼の手を見るとあの夜のことを思い出して恐怖を感じるけれど、今はそんなことを言っている場合ではない。
「お待ちください。わたくしも参ります」
ローサが剣を支えによろよろと立ち上がり、私とカネラ王子との間に立ちはだかった。
「いや無理でしょ」
「あなたとコハル様がふたりきりなど、冗談ではありません」
すさまじい形相で睨まれたカネラ王子が困ったように続ける。
「信用ないなぁ。さすがにこんなトコじゃ何もしないし、っていうか、これから竜帝に会いにいくのに何か出来るわけないでしょ。ここで大人しく待ってなって」
ローサの気持ちは嬉しいけれど、ここはカネラ王子の意見に同意だ。
「ローサ、」
そう彼女に声を掛けたときだった。唐突に、バサリという大きな羽音とともに視界に影が出来た。
――え?
振り仰いで、大きく目を見開く。
そこにいたのは、リュー。
間違いなく、ずっと捜していた<リュークレウス竜帝陛下>だった。