再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
「え?」

 感情のない低音がその口から発せられて、リューが彼らに向かって右手を向ける。

 一瞬の出来事だった。

 ゴゥっという地響きのような音と共に、皆のいる場所に真っ黒な火柱が立った。

 ――え?

 悲鳴も、何も聞こえなかった。
 代わりにふっと頭上で鼻で笑うような声が聞こえて。

「これで邪魔者は消えたな。行こう、コハル」

 バサっと彼が背中の翼を羽ばたかせて、私の身体は宙に浮いた。
 今も轟々と燃え盛るその場所には、黒炎と黒煙しか見えない。
 さっきまでそこにいたはずの皆の姿はない。

 誰の姿も、見えない。

 ――ヒュっ、そんな音が自分の口から漏れた。

「いやああああああーーーー!!」

 私はどんどん遠ざかっていく黒煙に向かって今更手を伸ばし絶叫を上げていた。

「メリー! ローサ! エル! カネラ王子ーー!」

 暴れる私を抱えてリューはどんどん暗い闇の中へと降りていく。
 光が遠ざかっていく中、私の酷い声だけがいつまでも響いていた。


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