再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
魔王
第82話
私のせいだ。
私が油断したから皆が……。
全部、私のせいだ……!
「離して! 離してください、リュー!」
「危ないぞコハル、落ちたらどうするんだ」
自分の酷い声の方が場違いなのではと錯覚するほどの落ち着いた声音。
涙でぐちゃぐちゃになった視界の向こうに見えるのは、なんの罪悪感も感じられない優しい笑顔。
でも、違う。この人はリューだけど、リューじゃない。
「魔王……あなたなのね!」
情けないほどに自分の声が低く震えていた。
あの悍ましい黒い炎は忘れもしない。魔王が散々使っていた魔法の炎だ。
でも彼は目を瞬いて軽く笑いながら首を傾げた。
「何を言っているんだ? 魔王などどこにいる」
「……っ」
……もう、迷っている暇はない。
この人を、リューをなんとしても止めなくてはならない。
これ以上犠牲が出てしまう前に。これ以上彼が誰かを傷つけてしまう前に。
私が、彼を止めなくてはならない。