再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
《 可哀想にのう。ずうっと泣いておったわ。そして、ずうっとオマエの名を呼んでおった 》
「私の……?」
《 コハル、コハル、コハルと、煩いくらいに何度もな 》
「コハル……?」
リューが不思議そうに目を瞬く。
――私は5年前のリューを知らない。
でも、まだ皇子だった頃の彼が、塔のあの狭い部屋の中でひとり私の名を呼んで泣いている姿を想像したら、たまらなかった。
《 オマエがこやつの傍にいてやれば、こんなことにはなっていなかっただろうになぁ? 》
「……っ! あんたが……そもそも全部あんたのせいじゃない!」
癇に障るクツクツとした嗤い声が穴の中に響き渡る。
《 聖女よ。よもや、こやつの父が死んだのは余のせいだとでも思っておるのではあるまいな 》
「は?」
《 こやつら竜人族も所詮は竜の血を引く魔族よ 》
それは、最近リューから聞いて知った事実だ。
少し驚いたけれど、それだけ。
魔族だって、リューはリューだ。
「だから何だっていうの?」
《 わからんか? その魔族が。聖女の力をまともに受けて平気であると思うか? 》