再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
「……え?」
自分の口から気の抜けたような声が漏れた。
《 ハッタリだと思うなら、今こやつに聖女の力を使ってみるといい 》
魔王の笑い声が響く中、私は目の前のリューにゆっくりと視線を合わせる。
リューは未だに私を心配そうに見つめていて。
「コハル?」
……7年前、私はリューのお父さんを魔王から救うために聖女の力を使った。
聖女の力なら救えると信じて。躊躇いなく、リューの目の前でお父さんに聖女の力をぶつけた。
(じゃあ、リューのお父さんが亡くなったのは、私のせい……?)
――私が、リューのお父さんを、死に追いやった?
「……うっ」
ぐらりと眩暈がして、同時に胃液がせり上がってくるような気持ち悪さを覚えて口を押さえる。
目に先ほどとは違う涙が滲む。
(そんな……)
《 クックッ、出来ぬか。そうであろうなぁ。聖女ともあろう者が、愛する者を殺せるわけがないものなぁ? 》
魔王の嗤い声が煩いくらいに頭に響いていた。