再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
聞こえるのは声だけで姿は見えないのに、魔王がその唇の端をにぃと上げるのが見えた気がした。
《 花の王国の聖殿を破壊したのも、こやつの仕業よ 》
ゆっくりと目を見開いていく。
声が出ない。
呼吸も出来ない。
《 ずぅっと呼んでいたオマエを、やっと手に出来たオマエを、二度と手放したくはなかったのだろうなぁ。全く、恐ろしい執念よ 》
リューが……?
リューが聖殿を、『召喚の間』を破壊して私を向こうの世界に帰せなくした?
――コハルのことは俺が守る。他の誰にも渡すつもりはない。だから、安心してもう眠れ。
あのとき、そう言って私を安心させてくれた彼が……?
「うそ……」
「コハル?」
心配そうにこちらを見つめる彼から手を離し、私はゆっくりと後退る。
もう、何もわからない。
頭の中がぐちゃぐちゃで、何も考えられない。
何も、考えたくない……!
「――っ」
「コハル!?」
私は闇に向かってひとり駆け出していた。