再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
第84話
「ハァ、ハァ……っ」
闇の中に、私の荒い息と足音だけが響いていた。
この闇には果てがないのだろうか。
視界が利かないせいで、走っているはずなのにまるでずっと同じ場所をぐるぐる回っているだけのような錯覚に囚われる。
それでも、私は走っていた。
また、リューから逃げてしまった。
きっとまた、彼を傷つけてしまった。
(でも、信じてたのに……)
まさか彼が、私を元いた世界に帰せなくした張本人だったなんて。
その事実もショックだけれど、それ以上にリューに平然と嘘を吐かれていたことがショックだった。
「わっ!」
そのとき何かに躓いて、私は思いっきり無様に転倒した。
「ったぁ……」
ゆっくり起き上がると、膝や腕、頬にまで痛みを覚えて、なんだかもういっそ笑いがこみ上げてきた。
「はは……何やってるんだろう、私」
その場に座り込んだまま独り言ちる。