再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。

 ――そうだ。
 7年前、あのときはリューが一緒に居てくれたのだ。
 リューが一緒に戦ってくれたから、私はなんとか魔王を封印することが出来た。

 でも今、彼はいない。
 私から離れてきてしまった。

 リューは私を愛してくれたのに。
 愛を知らなかった私に、“愛おしい”という気持ちを教えてくれたのに。

 温かかった。
 嬉しかった。
 心がいっぱいに満たされた。

 だから私も同じように彼を愛したいと思った。
 なのに、私は……。

 《 哀れよのぉ、聖女よ 》

「!?」

 また魔王の声が響いて、私は闇に目を向けた。

 《 愛する者に裏切られ、さぞやショックだろうのぉ 》

 悔しくて、でも言い返せなくて闇を睨みつけていると、その声が急に甘くなった。

 《 どうだ聖女よ。余のモノにならぬか 》

「なにを、」

 でも次の瞬間、私は思い出した。

 ――余のモノにならぬか。

 それは、7年前にも言われた台詞だ。
 なんの冗談か、敵であるはずの私に魔王はそう誘いを掛けてきたのだ。
 何度言われても私の答えは決まっている。
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