再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
「まだご挨拶が出来ていないので」
このお城の中にお父さんの気配はない。
だから、どこかに別邸などがあるのだろうかと思ったのだ。――でも。
「父上は、5年前に死んだ」
「え……?」
掠れた声が自分の喉から漏れていた。
(死ん、だ……?)
その言葉の意味を理解して、さーっと血の気が引いていく。
「――ご、ごめんなさいリュー! 私、」
お父さんが亡くなっていたなんて知らずに軽率な発言ばかりしてしまった。
罪悪感で頭が真っ白になる。
でもリューは笑顔で首を振った。
「いや、謝ることはない。俺もコハルに言わなければと思いながら、なかなか言い出せなかった」
5年前ということは、私がこの世界を去ってから2年後ということだ。
魔王の洗脳から解き放たれたリューのお父さんは、私にも「ありがとう」と言ってくれた。
そのときのリューに少し似た笑顔は、まだ鮮明に覚えている。
「やはり魔王に操られていたことが大きな負担になっていたようでな。コハルが去った後、臥せがちになって」
そう話してくれたリューを、私は強く抱きしめていた。