偽る恋のはじめかた





「お疲れ」


聞き覚えのある声が耳に届いた。ラーメンをすすりながら顔を上げると、そこにいたのは営業部の戸田(とだ)だった。



彼とは同期で新人研修で、接点があり会社で会うと近況を報告する仲だった。


最近は忙しそうで会うのは久しぶりだ。
黒髪に短髪で清潔感があり、口が達者なので営業成績も良く、同期の中でも仕事が出来る男だ。



戸田は私の前の席に座り、大盛りに盛られた焼肉定食(やきにくていしょく)を食べ始めようとしていた。
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