偽る恋のはじめかた




「私の部屋が汚いって話は置いといて・・・・・・。
飲み会の時はどうでした?梨花と喋れましたか?」

「いや!それが!すごく話せて楽しかったよ!」

「そ、そうですか。よかったですね・・・・・・」


身を乗り出して、声も仕事の時よりハリがある。
嬉しさを隠しきれない表情が、梨花のことが本当に好きなんだな、と思い知らされる。

ずきっと、胸の奥が痛んだ。
梨花の話をすることは覚悟していたのに、実際にこんなに嬉しそうな表情を目の当たりにすると、ショックを受けてしまっている。


「実は・・・・・・、椎名さんに報告しなければいけないことがあって・・・・・・」


桐生課長は言いにくそうにして俯いている。数秒の無言が続く。


・・・・・・えっ、なんだろう。
もしかして、梨花と付き合ったとか?


桐生課長は凄く真剣そうな顔をして俯いていたので、深刻な話なのかと勘繰ってしまう。


聞きたいような、聞きたくないような・・・・・・。
私の中でいろいろな感情が交差していた。



< 101 / 261 >

この作品をシェア

pagetop