偽る恋のはじめかた
「最近どうよ?でっかいため息ついてたけど」
どうやら、さっきの吐き出した溜息が聞こえていたようだ。ご飯を口いっぱいに頬張りながら私に問いかける。
「人間関係でちょっとね・・・・・」
「あっ!そういえばさ、営業部だった桐生さん人事部の課長になったよな?どう?」
「そっか、桐生課長と同じ営業部だったんだね」
「すげぇ仕事出来る人だったよ。だから、あの若さで昇格したんだろうな。すげぇよな」
「桐生課長ってさ、どんな感じだった?
営業部にいたころから、・・・・・あんな感じ?」
「あんな感じって?」
「いやー。だからさ・・・・・」
私は辺りをキョロキョロ見回して、近く桐生課長がいないか確認する。陰口を言っているところを見られたら、永遠にネチネチと小言を言われるだろう。