偽る恋のはじめかた
桐生課長は梨花に一年前から片思いをしている。
梨花の理想の男になりたくて、自分を偽り俺様上司を演じていた。
そして、彼が好きな梨花も、
桐生課長に好意を抱いている。
あぁ、これはもう私の出番なんてないじゃんか。
私の恋に勝ち目なんてない、
100パーセント負け試合。
負け確定の恋なんてしたところで、何になるのだろう。ただ辛くなるだけ。
桐生課長が梨花を好きなんて、最初からわかっていたことだった。応援する立場だったのに、馬鹿真面目で一生懸命な彼を近くで見ていたら、いつのまにか好きになってしまった。
ルール違反をしたのは・・・・・・私だ。
私は、好きになってはいけない人を、好きになってしまった。
目の前で優しく笑う梨花の顔を直視できない。
「桐生課長も梨花のこと好きなんだよ?」
この言葉を伝えれば、みんなが幸せになれるのに
・・・・・・どうしても出てこない。