偽る恋のはじめかた
「ああ!桐生さんめっちゃ優しいよな!」
「・・・・・は?」
桐生課長が優しい?彼とは優しいという言葉が全く結びつかない。戸田の言ってることが1割も理解出来ない。
「ねえ、優しいって誰のこと?桐生課長は・・・」
〜♬
私が言い終える前に、戸田の携帯が鳴った。
「もしもし、はい。・・・・・はい、すぐ戻ります」
通話を切ると、食べ掛けだった焼肉定食をガーッと全部口の中に詰め込んだ。「ごめんな」と、手を合わせて謝るポーズを取ると、口の中にまだ残っている食材をモゴモゴ咀嚼しながら、席を立った。
「ちょっと!さっきの話の続きは・・・・・・」
急いでいる戸田に私の言葉など届いておらず、足早に食堂を後にした。
(あの課長が優しいなんて嘘でしょ・・・・・。
それとも、私にだけ冷酷だとか?そんなのパワハラじゃん)
私の心にモヤモヤだけが残った。