偽る恋のはじめかた
「皐月は?」
「えっ?」
「皐月も話したいことあるって言ってたよね?」
「・・・・・・あぁ、えっと・・・・・・」
今更、桐生課長が気になるなんて、そんなこと口にできるはずがなかった。
なにか言わなきゃと、焦った私は記憶の中で一番新しいできごとが、パッと浮かんだ。
「えっと・・・・・・、黒須君に好きって言われた・・・・・・かも?」
「えぇ!!あの黒須くん?!」
梨花は驚いた様子で声も大きくなっていた。
疑問系になってしまったのは、「好き」と言われたけど、言い逃げされたこともあり、まだ確信が持てなかったからだ。
「う、うん」
「黒須君、女子社員からの人気者じゃん」
「やっぱり?私を好きなんて嘘かな?」
「それはないでしょ。嘘で告白するような人には見えないよ」
「・・・・・・うん」
「付き合うでしょ?」
「いや、黒須君のこと、好きじゃないし」