偽る恋のはじめかた
大きな声を被せた私にびっくりしたようで、梨花は瞬きをするのを忘れて固まっている。
「皐月・・・・・・?」
様子を伺うようにおずおずと私に投げかけた。
私もハッとして大きな声を被せてしまったことを反省する。自分でも驚くくらい、反射的に出てしまったのだ。
「ご、ごめん。桐生課長は、良い人だと思う・・・・・・よ」
「あぁ!昨日、飲み会の後、部屋の前まで送ってもらったんだもんね?」
「あっ、うん・・・・・・」
「・・・・・・もしかして、皐月と桐生課長の間になにかあった?」
梨花の問いかけに、心臓がドクンと波打った。
本当のことを言ってしまおうか・・・・・・。
言うなら今しかない。
ごくん、と唾を飲んだ。