偽る恋のはじめかた



「椎名さんがパスタが好きって言ってたから、昨日聞いた後に調べたらこのお店のパスタが美味しいって評判で、今日の予約がたまたま空いてて・・・・・・」


「昨日予約してくれたんですか?誘ってくれたのって、今日ですよね?」


「昨日のうちに、誘おうと思ったんだけど、なかなか誘えなくて・・・・・・。当日になって、誘うしかない!って思ったらやっと誘えたんだ」


「ははっ」と恥ずかしそうに照れてる彼を見て、残念なところも含めて愛おしさが込み上げてくる。


普通は誘えないとかダサいな。って幻滅するところなのかな、

私はかわいいという感情しか湧いてこなかった。
自然と口元が緩んでニヤけてしまう。


「って、こんなダサいところを、なんで自ら白状してんだろ。はあ、聞かなかったことにしてくれる?」


「無理ですよ、聞いちゃいましたから」


「・・・・・・こういう時、モテる男ならサクッと誘えるのかな?」


「・・・・・・どうでしょうね?」


我慢しようと思っても、微笑みがこぼれてしまう。

誘うことを尻込みして、悩んでる桐生課長のことを想像したら、愛おしくてたまらなかった。


私のトキメキ数値を上昇させることが出来たのだから、私にとってはモテる男のスムーズな誘い方より、残念な桐生課長の誘い方が正解だと思った。

だけど、そんなことを言えるはずもないので、心の中で呟いた。





< 142 / 261 >

この作品をシェア

pagetop