偽る恋のはじめかた
「・・・・・・桐生課長、あの・・・・・・」
「ん?」
「・・・・・・あの」
よし、言おう。
言うぞ・・・・・・、
「今日は、良い休日だったなぁ。
買い物もできて、美味しいご飯も食べれてさ」
あまりにも優しい目をしていうので、胸の奥がきゅっとなった。
言おうと決心していたはずだったのに、
桐生課長の顔を見ると何故か言えなくなる。
だって、言ってしまったら
私にはその優しい目も、優しい声も向けてくれなくなる。
そんなことは当然なのに、心が拒絶する。
言えないのは、私の弱さとずるさのせいだ。