偽る恋のはじめかた
12 知りたい気持ち
ランチを食べ終えた私達は、行く当てもなく街並みをゆっくりと歩いていた。
当初の目的だった買い物は達成出来たし、ご飯も食べてお腹も満腹。私達には、目的も行くところもない。
「じゃあ、また会社で」
と、一言を桐生課長が言ってくれれば、この時間はすんなり終了するのに。
いつまで経っても言わないので、なぜか彷徨うことになってしまっている。
私から、さよならって言った方がいいの?
でも、それは私の口からは言えない。
少しでも一緒にいれるのは嬉しい。
うーん—・・・。
どうしたらいいんだろう。
正解がわからなくて、頭の中で考え込む。
「椎名さん、今日はありがとう。すごく楽しかったよ」
少し前を歩いていた桐生課長は突然振り返って切り出した。終わりの挨拶がきたようだ。
いざやってくると、終わりが来ることはわかっていたのに、どこか寂しさを覚える。
「・・・・・・これ、いつものお礼」
「えっ?だって、これ・・・・・・は・・・・・・」
照れた笑いを浮かべながら渡されたのは、見覚えのある綺麗にラッピングされた小さな紙袋だった。
驚かずにはいられなかった。
渡されたのは、梨花へのプレゼントだと思って選んでいたものだったから。