偽る恋のはじめかた



嬉しさよりも驚きの感情が強くて、素直に喜べずに動揺してしまった。


今日1日の桐生課長の笑顔は、梨花のことを考えて生み出された表情だと思っていた。


その笑顔は、私のプレゼントを選ぶためだったと、私の手の中にある綺麗にラッピングされた紙袋が力説してくる。


桐生課長からプレゼントをもらえるなんて、
———嬉しい、嬉しいに決まってる。


でも、喜んでいいのかな・・・・・・。


予想もしていなかったことが起きたので、心の中は様々な感情が入り乱れ、混乱していた。


少し油断すると愛おしいという感情が込み上げてきてしまう。


でも、それはダメなんだ。
自分の気持ちは胸の奥底に閉まって、桐生課長の恋を応援しようと決めたのだから。


私の感情なんて、いらないのに。


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