偽る恋のはじめかた
「椎名さん?俺、また間違えた?」
俯く私の顔を覗き込む桐生課長の表情はムカつくくらいに優しい。その優しい眼差しに私のトキメキ数値は上昇してしまう。
あぁ、もうすきだ
だいすきだ、
私は、桐生課長のことが・・・・・・、
「——・・・・・・すき」
「・・・・・・」
周りの音が全て一瞬止まったような錯覚に陥る。
———今、口に出してた?!
予想外に言ってしまったことに、激しく動揺する。
彼に視線を向けると目を見開いて、わかりやすく驚いている様子だった。
驚くよね、私に好きなんて言われたら。
なにしてんだろ、
なんで言ってしまったんだろう
喜ばれるなんて思っていたわけではなかったけど
彼の反応に、ずきっと胸が痛んだ。
言ってしまった後悔と、無言が続く状況に耐えられず、口を開いた。
「き、桐生課長」
「は、はい」
慌ててなにか言おうと思ったけど、
上手い言い訳が全く浮かんでこなかった。
このまま何も言わなければ、さっきの言葉は告白と肯定されてしまう。
どうしよう、
なにか、なにか言わないと・・・・・・、