偽る恋のはじめかた





「り、梨花は桐生課長が気になるって言ってました。・・・・・・2人は両思いみたいです」



・・・・・・勢い余って言ってしまった。

あれほど言えなかった言葉が、自分の失態を隠すために咄嗟に出てきた。





・・・・・・いや、伝えるつもりだったんだから、
これでいいんだ。


伝えようと思っていたことを
言葉にしただけなのに、俯いた顔を上げれない。


桐生課長の顔を見れない、見たくないんだ。


だって、梨花と両思いと聞いたら
飛び跳ねるくらいに嬉しいでしょ?

桐生課長のことだから、泣きながら喜ぶかな、
そんな表情を見たくないんだよ。

胸が押しつぶされるくらい、辛くなってしまうから。

< 159 / 261 >

この作品をシェア

pagetop