偽る恋のはじめかた
「り、梨花は桐生課長が気になるって言ってました。・・・・・・2人は両思いみたいです」
・・・・・・勢い余って言ってしまった。
あれほど言えなかった言葉が、自分の失態を隠すために咄嗟に出てきた。
・・・・・・いや、伝えるつもりだったんだから、
これでいいんだ。
伝えようと思っていたことを
言葉にしただけなのに、俯いた顔を上げれない。
桐生課長の顔を見れない、見たくないんだ。
だって、梨花と両思いと聞いたら
飛び跳ねるくらいに嬉しいでしょ?
桐生課長のことだから、泣きながら喜ぶかな、
そんな表情を見たくないんだよ。
胸が押しつぶされるくらい、辛くなってしまうから。