偽る恋のはじめかた
「これからも・・・・・・桐生課長の恋を誰よりも応援しています」
絞り出した声は震えていたかもしれない。
その言葉は嘘だった。
嘘だけど、本当だった。
桐生課長の恋を応援したいという気持ちも嘘ではなかった。
好きな人に幸せになってほしい、
こんな純粋な感情も私は持ち合わせていた。
ただ、今は上手に笑えそうにない。
涙がすぐそこまできていた。
目を伏せて目に溜まる涙を隠した。
この涙を見せたら、桐生課長は困ってしまう。
好きな人を困らせたいわけじゃない。
泣きたくなんてないのに、そんな私の気持ちとは関係なく涙が溢れそうになる。
堪えろ、出てこないでよ、涙。