偽る恋のはじめかた
桐生課長は右手で頭をくしゃっとかく仕草をして、私から目を逸らして重い口を開いた。
「いや、その、まさか両思いになれるなんて・・・・・・。全部椎名さんのおかげだ、な」
力なく笑う桐生課長の表情に堪えていた涙が、決壊寸前だ。
「・・・・・・良かったです、ほんとうに・・・・・。
今日で、俺様上司改革も終わりですね」
目に涙が溜まっているのを誤魔化すように
いつも以上に笑ってみせた。
自分の心を無視して口が勝手に動く。
言葉を放つたびに、辛さが増していく。
これで、私たちの関係は終わり。
桐生課長は好きな人のために理想の俺様上司になりたくて、私はそれを指導していただけ。
その恋が叶ったのならば、作戦会議という名のランチをすることもないし、こうして休みの日に会うことは・・・・・・もうない。
私の物語は、報われない恋で完結だ。