偽る恋のはじめかた
「ふふふっ」
自分のディスクに戻った後も、思わず笑みが溢れてしまう。笑わずにはいられない。あの俺様課長は、頑張って俺様上司になろうとしてたなんて———。
弱みを握れたのが嬉しくて、顔が緩みっぱなしだ。笑みが止まらず両手で顔を覆っていると、誰かに肩を叩かれた。
「椎名さん。ちょっと今いい?」
声を掛けてきたのは桐生課長だった。
知られたくない秘密を知られてしまったからか、顔色がだいぶ悪い。