偽る恋のはじめかた






桐生課長の声は辺りに響き渡るほど大きくて、周りにいた人達から、好奇の眼差しを向けられる。



街ゆく人たちが、彼の張り上げた大声に驚いているのが見て取れる。それ以上に私だって驚いている。


それはそうだろう、人が行き交う人通りの多い場所で、とびきり大きな声で「延長をお願いします!!!」なんて叫ぶのだから。





この人、いきなりなにを言い出すの??

予想を遥かに上回る言葉だったので、呆気に取られて返す言葉が見つからなかった。


延長ってなに??
・・・キャバクラじゃないんだから。


私の思考回路では、彼の言葉の意味を到底理解できなくて戸惑うことしかできなかった。
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