偽る恋のはじめかた
「・・・・・・延長って?なんだろう」
「あぁ、レンタル彼女とかじゃない?」
「かなり大声で、叫んでたよね・・・・・」
「よほど、延長したいんじゃない?」
人だかりの中から、私たちの様子を見てヒソヒソと囁く声が、やけにはっきりと耳に届く。
「延長をお願いします!」とどろくような大声で放たれたこの言葉は、思っていたよりも周りにいたみんなに聞こえていたようで、向けられる視線が痛い。
男女の間で『延長』という言葉が飛び交ったので、どうやらレンタル彼女とお客さんだと思われたみたいだ。
この状況に呆れている私をよそに、桐生課長は、返答を待ち望んでいるように、じっと見つめて目を逸らそうとはしない。
きっと、この人、今の周りの空気を読み取れていない。