偽る恋のはじめかた
— kiryu side —
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「延長をお願いします!」
勢いで放たれた言葉に、まず自分が一番驚いた。
気持ちが昂って叫んでしまい、思ったよりも辺りに響き渡ってしまった。
「椎名さんとの繋がりを終わらせたくないんだ」
「離れてほしくないんだ」
そう言おうと思ってたのに、口から出た言葉は異なる言葉だった。
なぜ、言おうと思っていた言葉を言えなかったのか、原因はわかっていた。
・・・—— 怖気付いてしまったんだ。
椎名さんに拒まれるかもしれない。
そう思ったら途轍もなく怖かったんだ。
怖気付くと同時に、カッコ悪くてもいい。
それでも、引き止められればいい。
そう思った。
それにしても、カッコ悪いな、
「延長をお願いします」なんて。
なんでもっと上手い言葉で伝えられないんだろうう。我ながら、ダサくて心底ガッカリする。