偽る恋のはじめかた



延長して欲しい。この俺の頼みに、


「わかりましたよ」「仕方ないなあ」と呆れながら頷いて欲しい。そう心の中で願った。





「桐生課長は梨花と両思いなんですよ?
両思いなんだから、私の出る幕はないです」



・・・・・・これは、拒否された、?


椎名さんは呆れながらも、延長を承諾してくれると勝手に思い込んでいた。


しかし、耳に届いたのは、願っていた言葉じゃなかった。拒否されたように感じて、心が締め付けられるように痛かった。


嫌だな、ただの上司と部下の関係に戻るなんて・・・・・・いやなんだ。




なんとか引き留めたいのに、上手い言葉が出てこない。なんて言えば引き止められるのだろう。

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