偽る恋のはじめかた
14 嫉妬
꙳
「・・・・・・はあ、」
自分の席に座りパソコンと向かい合う。カタカタと鳴り響くキーボードを叩く音を鳴らしながら、溜息と共に一つの後悔を吐き出した。
「・・・・・・俺は、」
桐生課長の言葉を聞かずにその場から逃げ出した。
あの時の私は今にも泣きそうで、涙が溢れる前に逃げ出してしまった。
涙を見せたら、私の気持ちに気づかれてしまうと思った。桐生課長は梨花と両思いなのに、私の想いがバレてしまったら、優しい彼は私を気遣うことだろう。
・・・・・・桐生課長を困らせたくなかった。
だから、彼の言葉を聞かずに逃げ出した。
逃げ出したのは自分のくせに、言葉の続きが今更気になって仕方がない。
真剣な表情で手を握って引き留められた。
何を伝えたかったのだろう?
もしかして、桐生課長は私のことを・・・・・・?
違う、違う。そんなはずない
頭を左右にぶんぶんと大きく振った。