偽る恋のはじめかた
スマホの画面を見ると、心臓がドキリと音を立てた。
【今日、ランチ行きませんか?】
桐生課長からランチの誘いの文面だったからだ。返事をすぐに打てずにスマホを持って固まる。
・・・どうしよう。なんて返事をすればいいのか、正解がわからなかった。
何か言いかけていた言葉もずっと気になっていた。・・・もう一度話した方がいいのかな。
決断ができずに返事に困ってスマホを持って固まっていた。
「椎名さん、これ確認お願いします」
隣の席から黒須くんが顔を出した。資料を手に持ち、ひらひらとさせている。
「ああ、うん…。ちょっと待ってね」
まだ返事返してないけど、まあ、メールは後で返せばいいか。
……仕事優先だよね。
スマホをデスクの奥の方にそっと置いた。
「・・・黒須くん、なんの資料?どこ確認すればいい?」
「これっす。この資料なんすけど……」
メールの返事は保留にして、目の前の仕事に集中した。