偽る恋のはじめかた




時計の針が12時を過ぎると、ちらほらと昼休憩に向かう社員が見受けられる。

キリのいいところまで仕事を進めて、椅子に寄りかかり背伸びをした。「ふあ~、お昼行こうかな」



「……あ、」

ここでようやく気づく。


桐生課長のことすっかり忘れてた!


後でメールの返事をしようと思っていたのに、仕事に集中していて返事をしていなかった。

慌てて桐生課長のデスクを見ると、そこに彼はいなかった。


スマホを確認すると、一通のメールが来ていた。
【また、誘います( ;∀;)】

泣いている猫のスタンプが連続で10個付きだった。



「ふっ、かわいい」

思わず零れた言葉にハッとして口元を両手で隠す。
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