偽る恋のはじめかた


「あー、そう・・・・・・だな。資料を一緒に見たら、距離が近くもなるのか・・・・・・そうか、そうか」

私と黒須くんの返答に、頭をぽりぽりとかきながら気まずそうな表情を浮かべた。

「・・・・・・」

「そこで提案なんだが、資料は2部使ってそれぞれで見ればいいんじゃないか?…そ、そうすれば2人の距離がそんなに近づくこともないだろ?」


「そうだ、それがいい!」なんて独り言のように呟いている。

・・・・・・なに言ってんだろう、この人。

今までだって、こんな場面山ほどあったはずなのに。今日の桐生課長はやっぱりおかしい。


彼の言動と行動が理解できなくて、頭の中は疑問符で溢れていた。そんな中、黒須くんは肩を揺らして笑いを堪えている。

< 214 / 261 >

この作品をシェア

pagetop