偽る恋のはじめかた
「あー、そう・・・・・・だな。資料を一緒に見たら、距離が近くもなるのか・・・・・・そうか、そうか」
私と黒須くんの返答に、頭をぽりぽりとかきながら気まずそうな表情を浮かべた。
「・・・・・・」
「そこで提案なんだが、資料は2部使ってそれぞれで見ればいいんじゃないか?…そ、そうすれば2人の距離がそんなに近づくこともないだろ?」
「そうだ、それがいい!」なんて独り言のように呟いている。
・・・・・・なに言ってんだろう、この人。
今までだって、こんな場面山ほどあったはずなのに。今日の桐生課長はやっぱりおかしい。
彼の言動と行動が理解できなくて、頭の中は疑問符で溢れていた。そんな中、黒須くんは肩を揺らして笑いを堪えている。