偽る恋のはじめかた
「椎名さーん、この資料の数字なんすけど」
「黒須くん!俺に持ってきなさい。確認するから」
「…桐生課長に見てもらうほどの仕事ではないんすけど…」
「いいから!ほら!」
「椎名さーん、小休憩で自販機コーナー行きません?」
「黒須くん!なんだ、偶然だなあ??俺もコーヒー飲みたかったんだよ。一緒に行こうか」
なぜだか、最近、桐生課長が黒須くんによく絡む場面をよく目撃する。
そんなに黒須くんと仲良くなりたかったのかな?
よく考えると、黒須くんに絡むというより、黒須くんと私が話している時に、やたらと邪魔されるような気もする。
・・・ん?これって・・・・・・、
もしかして、嫉妬してるとか?
期待も入り混じり。そんな考えが浮かんだ。
いや、だめだ。安易にそんなことを考えちゃだめだ。
今までの桐生課長の言動や行動を考えると、予想を遥かに上回ることばかりだった。
安易な考えで勝手に期待するのはやめよう。
相手は、あの桐生課長だぞ?