偽る恋のはじめかた
・・・・・・気づけば椎名さんの話を延々と聞かされている。後半はほとんどノロケのようなものだった。
ちらりと時計を確認すると休憩時間はとうに過ぎていた。
とっくに休憩の時間、過ぎてんだけど。
まあ、桐生課長のせいで伸びてんだから誰も怒らないよな。
「椎名さんは冷たいようで、人のことを考えてくれるんだよな」「笑顔がかわいい」「大きな口を開けて笑うところもいい」
そんなころを恥ずかしがる様子もなく延々と言ってのける。
・・・・・・椎名さんが可愛いこととか、知ってるっての!
これだけ椎名さんの話が出てくるんだから、桐生課長も椎名さんが好きって気づいてるんだろうな。
心のどこかで、気づかなきゃいいのに、
なんて、性格の悪いことを考えていたのにな。