偽る恋のはじめかた
桐生課長は、雨宮さんもまだ好きってことか?
なんだ、真面目な人かと思ってたけど、普通の男じゃん。
なんか、少しガッカリだわ。
「桐生課長も普通の男っすね、どっちも好きってことか」
「二股なんて!とんでもないっ!
ただ、一年以上雨宮さんが好きだったのに、それ以上に椎名さんが気になるなんて・・・・・・男として最悪だなって。人間失格なんだよ、はあ・・・・・・」
「・・・・・・頭カッチカチに固いすね、そんなの、一年片思いしたのも『好き』で、椎名さんに芽生えた気持ちも『好き』でいいじゃないすか?」
「いや、…椎名さんと過ごしたのは、ほんの少しの期間だし、一年の想いは……」
「あー、めんどくさっ!んなの、雨宮さんに片思いした一年間より、椎名さんと過ごした1ヵ月の方が濃かった、ただそれだけだろ!」
普通の男かと思ったら、予想を上回る真面目だった。感情的になって、上司なのに荒ぶってタメ口になってしまった。