偽る恋のはじめかた
15 心緒
꙳
部署のドアが開く音がして横目で確認すると、桐生課長と黒須くんが戻ってきたようだ。
……あのツーショットよく見るなあ。
また二人で午後の休憩でも行ってきたのかな?
そんなことを思いながら、目の前のキーボードを打ち続けていると、突如桐生課長の声が降りかかってきた。
「椎名さん、ちょっといい?」
「えっと、はい、」
呼び出されるとは思ってもいなかったので、驚いて肩がびくっと震えた。
「……さっそくかよ、」
隣のデスクの前に座った黒須くんは、あきれ顔でぽつりと吐き捨てた。
ん?さっそくってなんだろう?
その言葉の意味を頭の中で探しまわる。
「・・・・・・あと、雨宮さんも、ちょっと、いいかな?」
「はーい」
え、梨花も呼び出し?
同じ部署だけど、担当している仕事内容は違うので、一緒に呼び出される理由が分からなかった。
梨花と同時に呼び出されるなんて・・・・・・。
彼女に視線を向けると、平然としていて動揺は見られない。
動揺してるのは、私だけ??
……もしかして、二人はすでに付き合っていて、交際報告とか?
嫌な予感しか浮かばなくて、心臓が嫌な音を立てて波打つ。