偽る恋のはじめかた
ベッドに傾れ込んだ私の上に被さる桐生課長の瞳が私を捉えて離さない。
耳元に感じる吐息と共に囁く声からは色気が零れる。
「皐月、好きだよ」
「わたしもっ、…すき」
彼の優しくてあたたかい眼差しは
今、私だけに向けられている。
私だけのものになればいいのに。
そう願い続けた、彼の視線も、彼の熱も
今は、私だけに向けられている。
少しだけ遠回りをした私たちは
もう離れることがないように、
———抱き合い、求め合う。