偽る恋のはじめかた
降り注ぐキスに抵抗することなんてなくて、入り込む彼の熱さと気持ちよさに、次第に酔いしれていく。
「……ぁっ、」
彼を求める私をよそに、ピタリと動きが止まった。
「……今日、早朝会議だ」
身体は重なり合ったまま、顔だけ同じ方向に視線を送る。時計の針の位置を見て顔を見合わせた。
「……時間がやばいね」
「……我慢します」
重なっていた身体が離れると、不完全燃焼の身体は寂しさを感じる。
「一回帰ってから、スーツ着替えないとだから、もう行くよ」
そそくさと着替えをすると、寝癖が残ったままそう言い残して玄関に向かった。