偽る恋のはじめかた







この日は出社すると、部署内の空気が騒ついているように感じた。



「……おはよう、ございます」


空気を読むように、いつもより控えめに挨拶すると、同僚の視線が一気に集まる。会話を中断させると、ぞろぞろと私の方へ向かってくる。


え、なに?なに?






「椎名さんって、桐生課長と仲良いの?」


私の周りに群がってきた女性社員達は、興奮気味に言葉を投げかける。


もしかして、私達の関係がバレた?!
心臓が嫌な音を立てて、鼓動が早くなる。


「……な、なっ、なんでですか?」


冷静を装いつつも内心は動揺していた。
動揺の表れで言葉が詰まってしまう。


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