偽る恋のはじめかた
「な、なんで、私に聞くんですか?」
「んー、桐生課長って、最近椎名さんのことよく見てるじゃない?優しい雰囲気になったのも最近だし……、付き合ってたりするのかなあって」
す、鋭い。
女の人って、なんでこんなに勘がいいのだろう?
的確に当たりすぎて怖いくらいだ。
「……え、えっと、」
なんて答えるのが正解なのかな?
私を凝視する視線を受けながら、返答する言葉を探して、頭の中でひたすら考えていた。
「朝からみんな集まってどうしたんですか?」
頭の中で必死に考えていると、背後から聞きなれた愛しい声が聞こえてきた。
困っている私の代わりに答えてくれたのは、桐生課長だ。
今の状況を彼に伝えたいけれど、どうしていいかわからず、口をぱくぱくさせるしかなかった。そんな私を見て「大丈夫」とでもいうように、軽く頷いた。