偽る恋のはじめかた
⋆⸜꙳⸝⋆
桐生課長が想いを寄せていた相手が、同期の雨宮 梨花だった。
梨花は高スペック男性が大好物で、桐生課長が着任した日に気に入っていたので、すぐ上手く行くのでは?と私は思った。
私の勤めてる会社は午後に10分休憩がある。
10分と時間が短いため、普段は自販機コーナーに飲み物を買いに行ったり、移動はせず自分のディスクで携帯を見たりして、貴重な休憩時間を過ごすことが多い。
梨花に聞いて確かめたいことがあったので、午後の10分休憩の時間に、梨花を自販機コーナーまで連れ出した。
幸いにも他の社員は誰もいなかったので、そこに置かれているテーブルと椅子に座り、梨花に問いただす。
「ねえねえ。梨花さ、桐生課長良いなあって言ってなかった?」
「えっ?
私、そんなこと言ってた?」
キョトンと、目を丸くして不思議そうに首を傾げている。言ったことを完全に忘れているようだった。